【愛媛県】R8年度 愛媛スリランカ技術交流事業:⑵ 「スリランカにおける愛媛の柑橘栽培技術の普及と課題」|(3) 「スリランカの海外就労制度と日本への人材送出し」
愛媛県国際農業者交流協議会Share
NF愛媛|愛媛・スリランカ交流レポート〈続編〉|2026/10/15
愛媛から渡ったみかんは、スリランカで今、どのように育っているのでしょうか。そして、日本で働こうとするスリランカの若者たちは、どんな準備をして海を渡ってくるのでしょうか。
2026/10/15に参加した愛媛スリランカ技術交流事業の交流会。前の記事では、大森典子さんの講演から、長年の交流の歩みをご紹介しました。今回は、スリランカ側からの柑橘栽培と海外就労についての報告、そしてアイム・ジャパンによる受け入れ・育成の取り組みを振り返ります。
今回紹介する3つの報告
・スリランカにおける愛媛の柑橘栽培技術の普及と課題
・スリランカの海外就労制度と日本への人材送出し
・アイム・ジャパンによる外国人材の受け入れと定着に向けた支援
愛媛のみかんが、スリランカの畑で育っている
最初の報告は、スリランカで進められている柑橘栽培の現状です。現地の研究機関や農家の写真を交えながら、日本から導入された品種が、どのように育てられているかが紹介されました。
スリランカの柑橘栽培の現状を紹介する発表。現地の畑や試験の様子を、通訳を交えて伺いました。配布資料によると、日本から導入されたのは9品種。スリランカ国内の異なる農業環境で栽培試験を行い、その中から3品種が選ばれました。資料では、それぞれ「Horana Ehimi I(MYG)」「Horana Ehimi II(NAN)」「Horana Ehimi III(NCN)」と記されています。栽培に適した地域として挙げられたのは、高地の中間地帯(Up Country Intermediate Zone)でした。[1]
同じ苗木でも、気候や土、水の条件が変われば育ち方も変わります。愛媛で培った技術を、現地の条件に合わせて試していく。その積み重ねが、今回の報告から見えてきました。
苗木と一緒に伝わった、畑での工夫
紹介された技術は、植え付けの方法、枝を切って樹形を整える剪定・整枝、果実を覆って保護する方法、防草シートやマルチの利用などです。資料には、バンダラウェラの農家の畑や、テレビ番組を通じた普及活動の様子も掲載されていました。
ラハンガラ農業試験場(ARS Rahangala)では、栽培管理の違いを比べる試験も行われています。資料に示された3品種の本数は、順に93本、85本、122本。このうちEhimi Iの20本を選び、4つの処理で生育を比較する取り組みが紹介されました。[1]
| 区分 | 資料に記載された内容 |
|---|---|
| A | 花と果実をすべて取り除く |
| B | 新しく伸びた枝を、1枝につき葉8枚を残して剪定する |
| C | 花と果実を残したまま育てる |
| D | 枝を誘引し、樹形を整える |
資料には、枝の数や長さ、葉の数などを記録した途中経過の表もありました。ただし、どの管理方法が最もよいかという最終的な結論までは確認できません。ここでは、現地で観察と比較を続けている試験として受け止めたいと思います。
実がなる、その先の品質をどう高めるか
報告では、成果とともに課題も示されました。資料に挙げられていたのは、長引く乾燥、高温、味の問題、そして果実にスポンジ状の質感が生じることです。温室などで保護しながら育てる栽培の様子も紹介されていました。[1]
今後必要とされているのは、果実の品質を高める技術、施設での栽培への理解、カイガラムシなどへの環境に配慮した病害虫対策、指導にあたる新しい職員の研修、加工や付加価値商品の開発、農家への支援です。
みかんの木が育ち、実をつけることは大切な成果です。そのうえで、おいしい果実を安定して届け、農家の仕事として続けられるようにするには、さらに工夫が必要になる。長年の技術交流には、今も一緒に考えていく課題があることを知りました。
海外で働く人を、送り出す前から支える
続いて、スリランカ海外雇用局(SLBFE)のT. Jeyakanthanさんから、海外就労の仕組みと日本への人材送出しについて説明がありました。資料に記載された役職は、マーケティング担当アシスタントマネージャーです。
SLBFEは、海外で働く人の保護や、人材紹介機関の管理などを担う機関として紹介されました。政府の政策、人材紹介の窓口、海外の雇用先をつなぐうえで、働く人が安心できる仕組みを整えることが重視されています。[2]
資料によると、2025年にスリランカから海外就労のために出国した人は311,287人。海外で働く人からの送金は80.8億米ドルでした。渡航先の約70%をクウェート、アラブ首長国連邦、カタール、サウジアラビアの4か国が占めることも示されていました。
この数字からは、海外で働くことが多くの家族の暮らしに関わっていることがうかがえます。発表では、送り出す相手国を広げることに加え、人材紹介の透明性や、働く人への支援を充実させる方向が説明されました。
当日の配布資料。柑橘栽培の技術交流と、外国人材を迎える地域の課題を、さまざまな立場から学ぶ機会になりました。日本への送出しは増加。数字を分けて見ると
SLBFEの資料では、日本へ向かった人は2023年の5,645人から、2025年には約1.1万人へ増えています。ただし、全員が技能実習生というわけではありません。資料の分類では、技術者、技能実習、特定技能などが分けて示されています。[2]
| 区分 | 2023年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 技術者(Engineer) | 1,314人 | 2,418人 |
| 技能実習(TITP) | 798人 | 981人 |
| 特定技能・外食(SSW – Food Service Industry) | 90人 | 333人 |
| 特定技能・介護(SSW – Nursing Care) | 86人 | 477人 |
出典:SLBFE配布資料、PDF 5ページ。これは送出し人数であり、日本に在留する人数ではありません。2025年の総数は上段グラフが11,091人、下段表が11,092人で一致していないため、本文は「約1.1万人」としています。表の分類は原資料に沿ったもので、日本の在留資格分類とすべて同一とは限りません。
資料では、2026/03/13時点の認可された人材紹介機関1,032社のうち、日本向けの送出しを行うのは121社とされています。また、日本向けの求人承認、手数料の透明性、雇用契約の確認など、働く人を守るための仕組みが説明されました。
渡航前の準備も、日本語や仕事の技能だけではありません。賃金や労働条件、権利と責任、相談先、送金や費用の管理、健康や緊急時の連絡先、家族の準備まで含まれます。受け入れる側も、こうした準備を経て来日する人の生活全体を知ろうとすることが大切だと感じました。
来日前から配属後まで、学びをつなぐ
公益財団法人国際人材育成機構(アイム・ジャパン)松山支局の木村さんからは、送り出し国の政府機関と連携した、人材育成と受け入れ支援の取り組みが紹介されました。
木村さんの説明によると、募集・選考の段階では面接や日本語、学力、体力などを確認し、来日前の訓練へとつなげているそうです。試験の結果に加えて、学ぶ姿勢や取り組み方も見ているとのことでした。
入国後には1か月間の講習を行い、日本語や生活のルール、消防・交通安全などを学んでから、それぞれの受け入れ先へ向かいます。配属後も日本語勉強会や日本語能力試験への挑戦、作文・ポスターのコンクールなどを通じ、学びを続ける支援があると紹介されました。
講演では、愛媛県との交流事業に関わる農業分野の受け入れについて、3社で7人の実習生が働いているとの説明がありました。これは当日紹介された取り組みの数字で、愛媛県全体の外国人農業従事者数を示すものではありません。
学んだ技術を将来、母国で伝えたい。自分で会社をつくりたい。木村さんから紹介された実習生の目標を聞き、受け入れの期間を、その人の次の人生につながる時間として考えることの大切さを感じました。
制度が変わる時こそ、人を育てる視点を
木村さんのお話では、育成就労制度への移行にも触れられました。出入国在留管理庁の案内によると、育成就労制度の運用開始日は2027/04/01です。[4]
講演で強調されていたのは、制度が変わっても、人を育てることの重要性は変わらないという点でした。日本語と技能を身につけ、その先の特定技能も見据えながら、長期的な成長を支えていく。その考え方は、農業の現場でも共有していきたいものです。
制度の移行には経過措置があるため、開始日にすべての技能実習が一斉に切り替わるわけではありません。実際の受け入れを検討する際には、受け入れ時期や本人の状況に応じて、関係機関に確認する必要があります。
NF愛媛として、どこから関われるだろう
ここからは、3つの報告を聞いた私たちの考察です。
柑橘栽培の報告では、愛媛の技術を現地の環境に合わせ、試しながら改善していく姿がありました。人材育成の報告では、来日前の準備から配属後の学習まで、人の成長を長く支える取り組みがありました。どちらにも、相手の状況を知り、時間をかけて関わる姿勢が通じているように思います。
海外農業研修に関わるNF愛媛としても、異なる国の農業や暮らしを学ぶ経験を、地域での交流に生かせるのではないでしょうか。受け入れ農家の経験を聞くこと、来日した方が学んだことを話せる場をつくること、帰国後にどんな農業や仕事をしたいのかを尋ねること。そんな身近なところから、関わりを考えてみたいと思います。
また、日本への送出し人数が増えていることと、一人ひとりが安心して働けることは、別々に確かめる必要があります。賃金や仕事の説明が伝わっているか。困った時に相談できるか。学んだことが本人の希望につながっているか。受け入れた人数だけで、交流の成果を判断しない視点も大切にしたいところです。
愛媛のみかんがスリランカの畑で育ち、スリランカの若者が愛媛の農業を学ぶ。その行き来を、双方の農業と暮らしに役立つ関係へ育てていくために、私たちにできることを考える機会となりました。
愛媛県国際農業者交流協議会(NF愛媛)
事務局 清家正亀
English Summary|英語で読む
At the Ehime–Sri Lanka exchange event on October 15, 2026, presentations explored citrus cultivation in Sri Lanka, overseas employment, and support for trainees coming to Japan.
The citrus presentation described how three varieties were selected from nine introduced from Japan. Field trials continue to compare cultivation methods, while dry conditions, high temperatures and fruit quality remain challenges. Further cooperation is sought in cultivation, pest management, staff training and processing.
The Sri Lanka Bureau of Foreign Employment outlined worker protection and preparation before departure, including language, job skills, employment conditions and access to support. Its handout showed that departures for Japan increased from 5,645 in 2023 to approximately 11,100 in 2025, across several employment categories.
IM Japan described training before arrival, an initial course in Japan and continued learning after placement. For NF Ehime, these reports highlight the value of sustained cooperation: adapting agricultural knowledge to local conditions while supporting each person’s skills, wellbeing and future goals.
愛媛県国際農業者交流協議会
愛媛県国際農業者交流協議会は(公社)国際農業者交流協会が主催する米国、欧州、オーストラリアにおける農業研修制度に参加した愛媛県内在住のOB・OGによって運営されています。