【愛媛県】R8年度 愛媛スリランカ技術交流事業:⑸ 「日本社会におけるスリランカ人材の受入れの意義と課題」| 講師:H.D.カルナラトネ教授
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NF愛媛 活動レポート|愛媛とスリランカの交流③
日本で働きたい、技術を身につけたい。そんな思いを持つスリランカの若者と、農業の担い手を必要とする愛媛。その出会いを、お互いの将来につながるものにするには、どんな準備が必要なのでしょうか。
2026年10月15日の交流会では、H.D.カルナラトネ教授が、日本社会におけるスリランカ人材の受け入れの意義と課題を語りました。教育、日本語、職場での伝え方、そして地域の暮らし。講演から、私たちの身近なところにも関わる課題が見えてきました。
講師:H.D.カルナラトネ教授
東京大学特任教授/コロンボ大学ビジネス経済学教授・前副学長
肩書は当日の講演スライドに基づいています。

国を越えて働く人を、どう迎えるか
教授が最初に示したのは、世界で国境を越えて暮らす人が増えているという大きな流れでした。生まれた国を離れ、別の国で学び、働き、家族と暮らす。そうした移動が広がるなかで、受け入れる社会の側も、人の移動を前提に考えていく必要があると説明しました。
講演では、日本に暮らす外国人の増加とともに、南アジア出身者の存在が大きくなっていることも紹介されました。次の数字は、当日の資料に掲載されたものです。
| 対象 | 2012年末 | 2025年末 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| スリランカ | 8,428人 | 79,128人 | 約9.4倍 |
| 南アジア5か国の合計 | 73,374人 | 518,968人 | 約7.1倍 |
出典:当日の比較表(IMG_3954)。スライドの出典表記は出入国在留管理庁。5か国はネパール、スリランカ、インド、バングラデシュ、パキスタンで、南アジア全体の合計ではありません。

教授は、南アジアを、働き手を送り出す地域という面だけで捉えず、今後の市場や事業の相手としても見ていく必要があると話しました。人の交流が、ものや技術の交流にもつながっていく。愛媛とスリランカの関係を考えるうえでも、大切な視点だと感じます。
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若者が学んできた道を知る
受け入れを考えるとき、相手がどのような教育を受け、何を学びたいと思っているのかを知ることが出発点になる。教授は、スリランカの教育制度を紹介しながら、その背景を説明しました。
スライドでは、初等教育の1~5学年、前期中等教育の6~9学年、その先の10~11学年、12~13学年という流れが示されています。大学・高等教育に進む道と、技術・職業教育を通じて専門性を身につける道があります。
教授の説明では、無償教育が学びを支える一方、国立大学への進学には厳しい競争があります。そのなかで、海外で技術を学び、仕事につなげたいと考える若者もいます。学歴や資格を見るだけでなく、それまでの学びと、これからの希望を合わせて聞くことが大切なのだと思います。

関連スライドを見る|スリランカ社会の背景

働く、学ぶ、家族と暮らす。そして事業を始める
日本に暮らすスリランカの人たちの姿も、一つではありません。講演の在留資格別の資料には、「技術・人文知識・国際業務」「留学」「家族滞在」「特定技能」「永住者」などが並んでいました。職場に来る一人の働き手には、学業や家族、将来の暮らしもあります。

教授が研究している分野の一つが、日本で暮らすスリランカ出身者による起業です。講演では、宝石の取引、中古車の売買、紅茶やスパイス、飲食店といった事業が紹介されました。
日本で経験を積んだ人が、自分の事業を始め、両国をつなぐ役割を担う。そうした歩みに目を向けると、人材交流を考える時間の幅も広がります。来日してからどんな仕事をするかに加え、その経験が数年後の本人の選択にどうつながるかも、考えておきたいところです。
専門の勉強と、日本語の勉強をつなぐ
講演で繰り返し取り上げられた課題が、日本語でした。教授は、専門分野の教育と、日本で働くための日本語学習が十分につながっていない点を指摘しました。専門知識があっても、それを日本の職場で伝え、仕事に生かすには、別の準備が必要になります。
例えば、エンジニアを目指す学生が、専門の勉強と並行して日本語を学べるようにする。講演では、大学での学びに日本語教育を組み合わせる民間の取り組みも紹介されました。来日直前に言葉を覚えるだけでなく、目指す仕事に合わせて、早い段階から学んでいくという考え方です。
職場では、言葉の意味が分かっていても、いつ、誰に、どこまで伝えるのかで戸惑うことがあります。教授は、報告・連絡・相談といった仕事の進め方を学ぶ大切さにも触れていました。
ここは、受け入れる側も工夫できるところです。手順を見せながら説明する、専門用語を言い換える、分からないことを尋ねる時間をつくる。農業の現場でも、毎日の小さな確認が、仕事を覚える安心感につながるのではないでしょうか。

迎える企業と地域にも、準備がある
講演後半の提案は、求職者への教育だけにとどまりませんでした。企業や大学には、専門性を生かせるインターンシップの機会、複数の言語による生活支援、管理職が異文化への理解を深める研修が提案されました。
両国の政府や支援機関に求められるのは、仕事と人を結ぶ情報の透明性を高めること、不適切な仲介による被害を防ぐこと、手続きや定着を支えること。来日前の準備と、来日後の支援をつなげる必要があります。

教授は、スリランカの若者にとって、海外で働く先には韓国など複数の選択肢があることも紹介しました。日本で働く魅力を考えるときには、賃金に加え、何を学べるか、安心して暮らせるか、その先の希望を持てるかを伝えていくことが必要なのだと受け止めました。

農業の学びを、両国を行き来する経験へ
愛媛の農業に関わる私たちにとって、特に身近だったのが、農業を学ぶ学生との交流の提案です。教授は、スリランカの農業教育機関や大学で学ぶ若者が、日本の農業の現場を経験する可能性に触れました。
例えば、半年ほど日本の農家や企業で学び、その経験を持って帰国する。講演では、そのようなインターンシップの構想が示されました。これは今後に向けた提案で、今回の講演で募集や実施が決まったという話ではありません。
日本の農業が抱える担い手の課題と、海外で技術を学びたい若者の希望。その二つを結ぶには、どんな技術を学び、帰国後にどう生かせるのかまで、一緒に考えることが大切になります。

NF愛媛として、顔の見える交流を重ねたい
ここからは、講演を踏まえたNF愛媛としての考察です。
海外で農業を学ぶ経験には、技術を覚えることに加え、違う暮らしのなかで、自分の考えや希望を伝えていく時間があります。受け入れる側にも、これまで当たり前だと思っていた仕事のやり方を、改めて説明する機会が生まれます。
だからこそ、まずは本人に尋ねることから始めたいと思います。どんな農業を学んできたのか。愛媛で何を身につけたいのか。将来、どこで、どんな仕事をしたいのか。その答えを聞くことで、日々の作業の教え方や、用意したい学びの機会も変わってくるはずです。
農家同士で受け入れの経験を共有したり、来日した若者が自国の農業を紹介する場をつくったりすることも、私たちが関われる一歩になりそうです。まだ決まった事業ではありませんが、これまでの海外農業研修や交流の経験を生かしながら、できることを考えていきたいと思います。
第一部の講演が終わると、会場は情報交換と交流の時間へ。資料から学んだことを、目の前の人との会話につなげる機会となりました。愛媛とスリランカのこれからを、そんな一人ひとりのやり取りから育てていければと思います。

講演の結びのスライドを見る
主催者や参加者への感謝を伝え、講演が締めくくられました。愛媛県国際農業者交流協議会(NF愛媛)
事務局 清家正亀
English Summary|英語で読む
At the Ehime–Sri Lanka exchange event on October 15, 2026, Professor H. D. Karunaratne discussed the significance and challenges of welcoming Sri Lankan people into Japanese society. His presentation connected migration, education, employment and entrepreneurship.
A central issue was the gap between professional education and Japanese-language preparation. He proposed earlier language learning alongside specialist studies, while calling on employers and educational institutions to provide internships, multilingual support and intercultural training.
For agriculture, he suggested opportunities for Sri Lankan students to learn on farms in Japan and take their experience home. This was a proposal for future cooperation, rather than an announced programme.
For NF Ehime, the lecture encouraged a practical starting point: ask each person what they have learned, what they hope to gain in Ehime and how they want to use that experience. Sharing knowledge in both directions can help agricultural exchange support individual growth and stronger local relationships.
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